認知症は進行していきます。
緩やかであれ急激であれ、現在の医療では、それを止めることはできません。
グループホームで働いている私たちは、入居者様が昨日までできていたことが、
ある日突然、あるいは徐々にできなくなることを目の当たりにします。
認知症介護を仕事にしているスタッフの心にも少なくない影響を与えます。
こうなっていくものだとわかっていても、手掴みでしか食事をしなくなったり、
歯ブラシに、歯磨き粉ではなくコップをこすりつけたり、
怖くて便器に座れなくなる入居者様を見ると、複雑な気持ちになります。
「○○ができなくなった」「以前は○○できていたのに」と、
できなくなった現状を嘆く報告がスタッフから上がってくることがあります。
しかし、私たちがやるべきことは、できなくなったことをただ嘆いたり、
同情したりすることではありません。
「では、どうしたらいいのか」と、
その方を支えるための具体的な手立てを考え、実行することが大切です。
できないことが増えても、スタッフの支持(指示ではなく)と適切なケアで、
その方は安心して生活が続けられます。
ケアする側が慌てることなく、その方の状態の変化に合わせて、ケアの方法を変えていくこと。
変化を自然なことと受入れ、淡々とケアを続けることが大事です。
もちろん、それは簡単ではありません。
例えば、転倒リスクが高くなった方にも、できるだけ自由に歩いていただきたいから、行動制限はしません。
でも、その自由は、見守るスタッフの緊張感とご家族の思いに支えられていて、
ご本人がけがをするかもしれないリスクと背中合わせの危ういものでもあります。
淡々と適切なケアを続けるためには、努力と覚悟が必要であることを理解して、
スタッフ全員で入居者様を支援していきたいと思います。
介護支援専門員 片岡博幸