入居者様の心からの笑顔のために ~ケアマネジャーからのメッセージ

「認知症患者」という言い方がされますが、私は、認知症を「病気」だと思っていません。
脳の疾病により記憶力や判断力が低下したり、見当識障害、失認、失行などが現れたりすることによって、
「生活に支障が出ている状態」のことを認知症と呼んでいます。
さっき食事したことを忘れる、トイレの場所がわからなくなる、お箸の使い方がわからなくなる、
歯ブラシを見てもそれが何なのかわからないといった状態のことです。
それらをサポートし、生活に支障がない状態を実現していくのが、私たち介護スタッフの仕事、つまりケアです。

ケアは、スタッフが入居者様に対して一方的に行っているわけではありません。
入居者様との共同作業です。
今日Aさんが歯を磨けなかったのではなく、
Aさんとサポートするスタッフとのコンビ(相棒?)が歯磨きを実行できなかった。
上手くいかなかったことを、現場のスタッフは実感します。
こうした感覚は、ケアが上手くいったときには、大きな達成感や喜びをスタッフにもたらしてくれます。
明日もまた頑張ろうという元気がわいてきます。

ですが、私たちスタッフが、どうしてもできないことがあります。
私たちは入居者様と長い時間、長い期間を一緒に過ごしていますが、家族様の代わりにはなれません。
家族様の顔を見たとき、声を聞いたときの入居者様の笑顔は、
私たちに見せる笑顔とはどこか違う、深い笑顔のように思います。
家族様の顔や名前がわからなくても、心の深いところで、懐かしい人、
大切な人と会ったという感覚を、入居者様は確かにお持ちです。
家族様と面会された日の夕方に、夜に、家族様と会った記憶が一瞬だけおぼろげによみがえって、
うれしさや感謝を口されたり、いろいろな形でそれが現れます。

私は、入居者様がサザンツリーで暮らしていて、家族様と離れていても、
本当の意味での主たる介護者は家族様であると考えています。
入居者様と家族様とでしか分かち合えない感情や感覚を、大切にしてくださればうれしいです。
これからも、私たちは、家族様の介護のお手伝いを精一杯つとめさせていただきます。

介護支援専門員 片岡 博幸

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