認知症の方の薬物治療

7月20日、第95回運営推進会議において、第22回身体拘束ゼロ推進委員会を開催しました。
今回は、ドラッグロックという拘束に関連して、「認知症の方の薬物治療」をテーマとしました。

ドラッグロックとは、認知症でいえば、徘徊などの行動を抑制するために、介護者の手間を省くために、
向精神薬などを過剰に服用させることをいいます。
一方で、向精神薬を服用することで、症状が落ち着き本人も気持ちが楽に生活できるのであれば、
適切な投与といえます。

冒頭に、松浦晋也氏が執筆した『母さん、ごめん。2 ― 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』
の以下の記述をご紹介しました。
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グループホームでの精神科の薬品の処方には、様々な意見がある。
「認知症は精神の病気ではない。安易に精神科の薬品を処方すべきでない」
とする意見があることは承知している。
「薬を飲ませて意識レベルを低下させ、管理しやすくしているんだ」
という意見があることも知っている。
その上で、これはもう気を付けつつも処方するしかないのだろう、
というのが母の妄想と暴力を体験しての実感である。
あのまま暴力をのさばらせ放題にした場合、グループホームのスタッフにかかる負荷は
大変なものになっただろうと容易に予想できるのだ。
とても家族から「精神科の薬の処方はやめてくれ」と言える状況ではなかったと判断している。
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認知症には、脳の働きが低下することによって起こる記憶障害、見当識障害などの中核症状と、
「暴言暴力」「妄想幻覚」「うつ症状」などの周辺症状があります。
中核症状である物忘れの症状は、ホームでの生活にはまったく問題ありません。
ですが、周辺症状は、非常に強い症状に悪化して長期化すると、
本人の心の負担や周囲の方への影響が看過できないレベルになることがあります。
グループホームでは、なるべく環境の整備やケアで対応していくのですが、
やむを得ないと判断した場合の選択肢の1つとして向精神薬による薬物治療があります。

その場合は、ご本人の状況を詳しく観察したことをまとめて、まずはご家族とよく相談をします。
多くの場合は認知症と診断された医療機関とは別に、
新たに心療内科を受診し、ご本人の症状に合った治療を行います。
安定するまでは2週間ごとに症状の経過観察を医師に報告し、
慎重にお薬の調整をして、きめ細かな対応ができるので、よい結果が得られています。

今まで漠然と向精神薬に懐疑的であった出席者の皆様にも一定の理解が得られた会議となりました。
特に今回初めてご参加くださった地域包括センターの方は、
ご家族、医師、ホームとが密にコミュニケーションを取りながら、
減薬や適切な薬物治療を行っていることに対して、大変興味を持たれ、
とてもよい取り組みであるとの感想をいただきました。

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