サザンツリーの入居者様は、多くの時間をリビングで過ごします。
食事やレクリエーション、テレビで高校野球や相撲を見て、
そして、入居者様同士で会話をされます。
その会話は、ほとんどかみ合っていないのですが、
表情は笑顔で、大声で笑っておられることもあります。
何がそんなにおかしくて楽しいのかと、よく観察してみると、
聞き手の方が、相手の話をよく聞いてあげているのです。
そして、話し手の方が、「そうやろ?」と笑って同意を求めると、
聞き手の方も笑っておられるのです。
実際のところ、本当に相手に言いたいことが伝わったかはわかりません。
でも、話の中身よりも、話を聞いてくれて、
自分の話にうなずいてくれたことがうれしいのだと思います。
どんなことでも否定せずに傾聴するという認知症コミュニケーションの基本を、
入居者様が実践されているではないかと気付きました。
スタッフが入居者様に話しかけるのは、相手の気持ちを引き出し、傾聴するためです。
近くにいるのに、誰も話しかけてくれず、誰も話を聞いてくれなければ、
孤独感でいっぱいになるでしょう。絶望的な気持ちになるかもしれません。
一日中ずっと静かに椅子に座っていたら、スタッフが「今日は、落ち着いて過ごされました」
と記録に書いてしまうかもしれません。
穏やかに暮らせることはよいことですが、
私は、落ち着いてもらうことだけがよいケアだとは思いません。
入居者様に喜怒哀楽を表現していただきたいと思っています。
口げんかなどがあったとしても、何も感じないより、
もっと心を動かしてもらえるようなケアを目指しています。
介護支援専門員/介護福祉士 片岡博幸